メンタルヘルス

職場のメンタルヘルス

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Ⅰ.ストレス



もともと機械工学の分野の用語

ゴム玉を圧迫したりスプリングを引き延ばしたりした際に生ずる歪みを表現する言葉ストレスになるような人生の出来事

life event:人生の比較的大きな出来事
daily hassles:日常的な悩み

ストレスへの適応:我々は、ストレスに対処する能力をある程度持っている。

①ショック期→②反ショック期(①、②、両方を併せて警告期)→③抵抗期
・外罰型(自分以外に原因を求めるタイプ)‥‥‥→被害妄想など
・自責型(自分の中に原因を求めるタイプ)‥‥‥→うつ状態、不眠状態


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Ⅱ.適応と不適応



適応 常に変化する環境や状況要請にも応じ、
同時に自らの要求をも生かし、
著しい葛藤や不安を経験することなしに生活すること
順応 受動的適合行動(暗闇に目が慣れる、風土に合ってくる)
①外的適応:客観的にみて、社会的文化的基準と折り合いながら
      他人と協調すること
②内的適応:個人の主観的世界、現象的内的枠組における適応
耐性 適応に失敗した場合(不適応)の心理的欲求不満に耐え、
乗り切る力のこと

適応の方法
 ①合理的解決
 ②直接的で健康なはけ口・発散方法
 ③間接的なはけ口
 ④様々な防衛機制

転移 特定の人へ向かう感情を、よく似た人へ向け変える
昇華 反社会的な欲求や感情を、社会的に受け入れられる方向へ変える
反動形成 本心と裏腹なことを言う
投影 他者へ向かう感情や欲求を、逆に他者が自分へ向けていると感じる
合理化 責任転嫁
知性化 感情や欲動を直接意識化せず、知的な認識や考えでコントロールする

アメリカ精神医学会・産業医学会の定義する「健康な心」

心から楽しめるものを持っている
考え方が柔軟であり、心にゆとりがある
他人を認めることができる
現実的な目標を持っている
生産的な社会活動に積極的に参加できる






表1:様々なストレス

職場でのストレス 家庭生活でのストレス 学校生活でのストレス
人間関係に起因するもの 夫婦間の問題
(不和、別居、離婚)
友人関係(クラス、サークル、クラブ活動)
仕事の質や量に関するもの 親子関係(進学、就職、結婚) 教師との間での軋轢
仕事への適性に関するもの 経済問題 成績に関するもの
将来への不安
(昇進や定年など)
親戚関係 進学に関するもの
  身体的ないし精神的病気や 外傷、事故、手術など  
  その他(嫁姑、騒音、宗教)  

表2:職場でのストレスの内容別労働者数の割合
労働省:労働者の健康状況の調査、1997

性別 男 性 女 性
職場の関係 40.6% 職場の関係 56.9%
仕事の質 37.4% 仕事の質 29.5%
仕事の量 35.3% 仕事の量 26.1%
仕事への適性 23.2% 仕事への適性 22.1%
昇進、昇級 22.7% 昇進、昇級 14.2%


表3:ストレス性障害の現れ方

ⅰ.身体的症状として
アレルギー性鼻炎 神経性視野狭窄 胃・十二指腸潰瘍
潰瘍性大腸炎 過敏性腸症候群 神経性嘔吐
本態性高血圧症 神経性狭心症 過換気症候群
気管支喘息 甲状腺機能亢進症 神経性食思不振症
インポテンツ 神経因性膀胱 不眠症
片頭痛 筋緊張性頭痛 書痙
痙性斜頚 関節リウマチ 腰痛症
頸肩腕症候群 原発性緑内障 メニエル症候群
円形脱毛症 多汗症  
ⅱ.精神的症状として
うつ病、種々の神経症(対人緊張、うつ状態、不安、心気など)、
不眠症
ⅲ.行動の症状として
イージーミス多発 事故多発
無断欠勤・遅刻 服装や身だしなみの乱れ
種々の依存症(アルコール、パチンコ等のギャンブル、買い物) 情緒不安定
(イライラ、八つ当たり、など)
仕事のムラ






不適応を自覚する群・自覚しない群
職場で問題となる事例が必ずしも病気であるとは限らない。

1.不適応を自覚する群
 抑鬱、不眠、不安、過敏性大腸症候群・じんましんなどの様々な心身症を症状として現す。一般的には、真面目で几帳面な方たちが多いが、状況によって誰でもなる可能性。(うつ病は心の風邪)
自分自身で不具合を自覚している場合、自ら医療機関なり、カウンセラーなりを受診しようとするので、職場で問題となるケースは少ない。
2.不適応を自覚しない群
 本人ではなく、職場の周囲の人が困っている場合。本人は気づいていないか、あるいは正当化していることが多い。
この様なケースで起こる症状は、無断欠勤、非協力、不機嫌、アルコール依存、注意力障害、事故頻発、など。
これらのケースでは、予防が大切。不適応が起こってからでは、周囲の家族の協力が是非とも必要。


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Ⅲ.ストレスと自殺



過労に伴う自殺は、最近40代以後のいわゆる働き盛りに増えてきたと、
しばしば指摘される。

1998年の自殺者は32,000人強、50・60歳代では、前年と比較して50%増。
その後5年間連続3万人を越えて、
2002年には32,143人(男;23,080人、女;9,063人)、
年齢別では60歳以上が34.6%、50歳代が26.3%、40歳代が15.0%
30歳代が12.2%となっている。

生産人口における主要死因別死亡数では、自殺は心疾患や脳血管疾患を抜いて、悪性新生物に次ぐ第二位
自殺死亡率も、G7の中で極めて高い方に位置している。

 人口10万対自殺死亡率国際比較
日本 25.4
アメリカ 12.0
イギリス 7.4
フランス 20.8

世界精神衛生連盟の報告;労働者の10人に1人が広義のウツ状態。
メンタルヘルスに対する企業の責任;従来は精神障害は労災認定されることは稀だった。しかし最近では、業務起因性が認められる傾向にある。

また、企業側に労働者の健康や安全に関する配慮が欠けている場合には、安全配慮義務違反として民事訴訟で遺族が勝訴する事例も出てきた。

労災認定 認定されるかされないかのどちらか極端な決定。
民事訴訟 責任割合において賠償金が決定。

労災認定で企業の補償がなくても民事訴訟で責任割合に応じた補償のなされるケースが増加中。健康な職場づくりによる心の健康増進とともに、発生した精神疾患にどのように対応するかも重要。

職場における精神疾患の予防、早期発見、早期治療、職場復帰などは、職場の健康管理の中でしっかり行われなければならない。精神疾患に関する正しい理解と協力が職場で必要なことはもちろんだが、精神疾患に関してはまだまだ偏見が残っているため個人に関するプライバシーには十分な配慮が必要。







表4:精神障害等の労災補償状況

平成何年度 ~8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度
精神障害 請求件数 93 41 42 155 212 265
認定件数 9 2 4 14
気分障害: 8
 神経症: 6
36
気分障害:19
 神経症:17
70
気分障害:41
 神経症:29
うち自殺
※含む未遂
請求件数 49 30 29 93 100 92
認定件数 4 2 3 11 19 31


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Ⅳ.うつ病



1.症状

a.ごく初期
(自覚症状) 人に会うのが苦痛で、仕事をするのが億劫だ。眠りにくいし、気が沈む、アルコール量増加
(他覚症状) 人前に出ても喋らず元気なく、
動作や表情にもいつもの活気がない。
b.やや進行すると
(自覚症状) 朝目が覚めたとき、体が怠く起きにくい。起きても頭が重く、いつもならできる簡単な仕事が難しいことのように感じられてできない。気が焦り、イライラして落ち着かない。自分だけが取り残されていくような孤独を感じる。喜んだり、悲しんだりができなくなる。物忘れがひどくなり頭が悪くなったように感じ、このまま駄目になりそうで怖くなる。しばしば人に引け目を感じ、自分が悪いことをしたような、すまないような気がする。
(他覚症状) 近頃陰気になり、口数が減り笑わなくなり、なにもせず静かにしていることが多い。落ち着かぬ様子でイライラと室内を歩き回ることや、突然の自殺企図によって、初めてうつ状態に気がつくこともある。
c.さらに進むと
深刻な悲哀・絶望感、激しい不安・焦燥、抑うつ昏迷状態が出現。

2.なりやすい時期

a. 五月病(進学、卒業~就職)
b. マタニティー・ブルー(妊娠~出産)
c. 空の巣症候群(子育てが終わって)
d. 転勤うつ病
e. 引っ越しうつ病
f. 昇進うつ病 
g. 荷下ろしうつ病

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Ⅴ.症例



症例A(38歳、男性)

主 訴 胃痛、全身倦怠感
家族歴 二人同胞、第2子、長男
既往歴 特記事項なし
生活歴 高卒後、現在の会社に就職した。
妻、長男、長女と四人家族
性格;几帳面、真面目、内向的
現病歴 平成9年、係長をしていたB製品販売部が、リストラをしている会社の方針で分社化となり、40人で(20人は出向、残りは新規採用)独立企業となった。

部長が社長に、Aさんは営業部次長となり、苦労をした。「営業は数字が全てである。実績を作っておかないと」と、必死で頑張った。
唯一の気分転換が酒とカラオケだった。

「顧客のペースに合わせなければいけない。」と、食事はほとんど外食であった。次第に胃痛に気付くようになり、嘔吐も加わり内科を受診した。

胃透視の結果、胃潰瘍と診断された。医師の指示による薬物療法と生活指導で、症状は軽快した。
平成12年10月ごろから、不況の影響もあり売上高が低下してきた。残業や休日出勤など、死ぬ気で立て直しを図ろうとしたが、業績は回復しなかった。

「うまくいかない。何とかしなければ。分社化して独立採算性になったから、ボーナスに響く。家のローンも、子供たちの教育費も、まだまだこれからなのに」と、うめき声さえ出たという。

ストレスを発散させるために、酒量は又次第に増加していった。出勤前に朝刊に目を通す習慣も次第に消失した。
12月、会議中に全身倦怠感と胃痛が激しくなり、途中で退席した。内科受診の結果、胃潰瘍の再発で、微量の出血があると指摘された。






症例B(41歳、男性)

主 訴 食欲不振、不眠
家族歴 二人同胞、第1子、長男
既往歴 特記事項なし
生活歴 大学卒後、現在の会社に就職して18年になる。
妻、長男、長女、実母と五人家族
性格;真面目で努力家、融通性に乏しい
現病歴 平成8年、人事異動で実績が評価され、営業課長代理から経営企画課長に抜擢・昇進となった。

期待に応えようと努力したのだが、これまで営業一筋でやってきたBさんにとって、経営企画室の仕事は初めてづくしで戸惑ったという。

「大切な仕事だから、完全なものにしなければ」という思いは強く、常にプレッシャーを感じる毎日だった。

又、社内への根回しで各部課との調整業務が多く、
(A事業部からの要請とB事業部からの要請と、営業部からの要請と、あれこれに気を回しているうちに時間ばかりが過ぎて‥‥)帰宅はいつも深夜になった。

そのうちに、夜中に目覚めては悩むようになった。上司に助言を求めると
「半分聞き流せばよいのだから。行動しながらまとめていけば良いのだから」と言われるのだが、
「聞き流すなんて性分としてとてもできない。行動しながらまとめるなんて、きっちりしたものになるわけがない」と、考え込んでしまう。

「抜擢してくれた上司に報いたい」と、休日出勤もして頑張ってはみるのだが、なかなかまとまらない。この頃から食欲がなくなり、出社しても仕事が手につかなくなり、不眠がちとなり、出勤時に会社のビルを見るだけで動悸がして冷や汗をかくことを自覚するようになった。

前に進もうとするが、恐怖に足がすくんでしまう。
心配した妻に付き添われ、近くの精神科クリニックに受診した。うつ病と診断を受け、休養に入ったが、三ヶ月過ぎてもまだ職場復帰できずにいる。



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Ⅵ.<4つのケア>



①セルフケア:労働者自身がストレスや心の健康について理解し、
対処する事

a.ストレスへの気づき
b.ストレスへの対処
*日常的に大切なストレス解消法

心に関して ・おしゃべりできる場所や友人の存在
・組織からの要請(期待)と自分らしさ(主張)との折り合い
体に関して ・ストレッチングやリラクゼーションで、緊張と弛緩とのバランスを保つ

c.ストレスへの気づきや対処を進めるためには
労働者が自らの心の健康問題について相談する対象が必要である
(身近な人、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ、事業場外資源等)

d.セルフケアを推進するための環境整備
労働者のセルフケアを支援するための対策が十分に為されている事業場は少ない
(そのためには、職場におけるメンタルヘルスの周知が望まれる)







②.ラインによるケア

労働者と日常的に接する現場の管理監督者(ライン)が、心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行う

a.職場環境等の改善

改善の対象 職場環境(作業環境、作業方法、休憩施設など)
労働時間、仕事の量や質(仕事の自由度・裁量権など)
職場の人間関係、人事労務体制、など
職場環境の評価と問題点の把握 意見聴取、具体的にはアンケート調査などの施行
管理監督者の
能力養成
声掛けを惜しまず、良き聞き役となる能力
→そのためには、管理監督者に対する教育研修、情報提供が必要
職場環境等の改善 把握した問題点の改善を図ること
一方的視点でなく、多様な視点を持つ努力が必要 例えば、上記のアンケート調査などを施行したあと、他部署からの助言や協力を受け入れる努力
仕事によるストレスを評価するモデル 三つの軸で評価する
①仕事の要求度(ノルマ)
②仕事の自由度(創意工夫の度合い)
③周囲からの支援
この三つの軸を念頭に置いて、現在のストレス度をすこしでも低くするには、どの軸に焦点を当てれば良いかを考えていくことになる
業務上の配慮 高ストレス状態、職場不適応、メンタルヘルス不全による休業後、
長時間労働などに対して→労働者の個々の能力、適性、職務内容などを考慮した上で、
・仕事量の軽減
・仕事内容の変更
・就業時間の調整
・人間関係の調整
・その他の各種サポート


b.労働者に対する相談対応

長時間労働や、強い心理的負担の可能性のある労働者、その他個別の配慮が必要と考えられる労働者に対しては、日常的に対応する必要性

相談と助言
 ①まずは、気付くこと
 ②ついで、話を聴くこと
 ③その上で、必要な情報提供・対応など
 ④あるいは、専門スタッフに依頼する
 ⑤いずれの場合も、プライバシーに最大限の配慮をする必要

c.事業者はこれらの管理監督者の役割や活動を十分理解し支援する事が必要







<気づきと寄り添いの技術(警察庁の資料をもとに改変)>
 1.気づきのポイント
 →平均的な姿からの逸脱(ズレ)(集団から、普段の姿からの)

 ①作業行動:不安全、投げやり、仕事を溜める、仕事にムラがある
       仕事のミスの増大、仕事の能率が上がらない
       残業・休日出勤の増加
 ②出退勤行動:遅刻・早退の増加、無届け欠勤、不規則欠勤
 ③態度   :服装の乱れ、作業服の汚れ放題、頭髪の乱れ
        無精ひげ、目の輝きの喪失、笑顔がない、
        目が合わない、日常的な挨拶をしない
        報告の減少、又は異常増加、小さな事故の増加
 ④異常日常行動:アルコール多飲、ギャンブル、反社会的行動

 2.聴き方(「寄り添い」という技術)
 ①とがめたり、注意したり、叱ったりしない
 ②支援の立場で「どうしたの?」と寄り添う
 ③気配りを充分に行う
 ④積極的に耳を傾ける(傾聴)
 ⑤必要なら本人の了承のもと、相談室を訪れる


<着目点と対応>
 1.目のつけ所
 ①体調や生活面の変化
  胃腸症状(腹痛、下痢、便秘など)
  食欲低下、
  睡眠障害、
  喫煙や飲酒量の増加、
  動悸・めまいなどの曖昧な身体不調感、
  無気力・無関心、など

 ②職場での就業中の変化
  話にまとまりがない、
  話が回りくどい、
  集中できない、
  記憶力・判断力が落ちた感じ、
  極端に自分のせいにして自分を責める、
  被害的な思い込みが強い、など

 ③態度の変化
  他人の目を過度に気にする、
  おどおどする、
  イライラと落ち着かない・怒りっぽい、
  横柄な態度、など

 ④その他
  出勤時酒臭い、
  人付き合いを避ける
 2.どう対応するか?
 ①本人に対して
  →産業保健スタッフを紹介する
 ②職場に対して
  (産業保健スタッフを交えて)
  →関係者間ミーティング
  →職場の対応の検討






③.事業場内産業保健スタッフ等によるケア

 事業場内産業保健スタッフ等とは
 ①事業場内産業保健スタッフ(産業医、事業場内保健士など)
 ②事業場内の心の健康作り専門スタッフ
 (臨床心理士、産業カウンセラーなど)
 ③人事労務管理スタッフ、など

 事業場内の健康管理担当者が、事業場内の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、その推進を担い、
 また、労働者および管理監督者を支援する
 その業務
 a.職場環境の改善
 b.労働者への相談対応
 ・就労中の心の健康問題を持つ労働者に対して
  →管理監督者と協力して職場適応を支援する
 ・専門的治療が必要と考えられる労働者に対して
  →その意志に配慮しつつ、適切な事業場外資源を紹介し、必要な
 治療を受けることを助言する
 ・休業中の労働者の職場復帰に対して
 →管理監督者および事業場外資源と協力しながら
  指導および支援を行うこと
 c.ネットワークの形成と維持
 事業場と事業場外資源とのネットワーク形成については、事業場内
 産業保健スタッフが中心的役割を担って、日常的に行うこと。
 事業場内産業保健スタッフの業務に対して、
 事業者の強力な支援と理解が必要 <プライバシー保護に留意>

④.事業場外資源によるケア

<事業場外資源>
地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センター、精神科等の医療機関、 事業場外の機関および専門家を活用し、その支援を受ける







症例A

発症経過について:
種々のストレス:分社化による新会社の設立、出向、業績低下、過重労働、etc

診断について:胃潰瘍という身体疾患が前景に出ているが、ストレスに起因するうつ状態が根底に存在する「仮面うつ病」と考えられる。


4つのケアからの対応法
 セルフケア
ストレス性障害、うつ状態の初期症状としての「朝刊シンドローム」
最初は、見出しくらいは頭にはいる。次第に読まなくなる。
本人にも家族にもハッキリ分かりやすい初期症状
 ラインによるケア
うつ病は早期発見ができ、かつ早期に対応すれば比較的治りやすい病気である。一方、発生頻度は高く、自殺の危険性もある。
従って、職場の健康教育で管理監督者に認知・理解を高めてもらうことが重要である。「励ましが有害であること」、「休養が必須であること」についても周知わ徹底させたいところである。
 産業保健スタッフによるケア
ケアには、自発的な相談と、職場関係者からの相談と、大きく2種類に分けられる。症状が強ければ精神科医への紹介が望ましい。職場事情等を専門医に説明し、対応は専門医に委ねるのが良いだろう。
 事業場外資源によるケア
産業医や保健婦は、
外部医療機関(精神病院、精神科・心療内科クリニック)に関する情報を日常から把握し、正確な情報を含む適切な紹介状を書く必要がある。


症例B

発症経過・診断について:
昇進うつ病、職場不適応症

治療について:
薬物療法が必須である。最近では、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入薬などによる薬物療法は、副作用、依存性、後遺症などの心配はほとんどなく、安全に使用でき、また有効性も高い。症状が軽快したら、カウンセリングも平行して行う。

対象は、自分の考え方や性格の傾向、自分の価値観、ストレス対処方法などについてである。

<その結果>
 ・「過剰に自己批判的だった。すぐ自分が悪いと考えてしまう傾向があった。
  (認知の歪み、受け取り方が独特である)」
 ・「会社人間過ぎた」
 ・「性格が融通性がきかなすぎた」
 ・「きっちりしたい、いい加減は厭だ。”まあまあ”や”なあなあ”は厭だ」
 ・「一人で悩みすぎた」
 ・「気分転換が下手だった」
 ・「気負いが強すぎた」など、

自己の思い込みの強さや性格・価値観に関する内省ができるようになった。
その結果、復職可能な状態となっていった。


4つのケアからの対応法
 セルフケア
真面目で几帳面な人が昇進した直後には、うつ状態になりやすい。
自己の性格傾向を把握し、日頃からストレス対処法を工夫するなど、
注意したい。
 ラインによるケア
管理監督者は、常日頃から部下の変化に注意しておく必要がある。
「いつもより元気のない状態が続いている」
「決断・判断が下しにくくなっている」などの症状に気付いたら、
部下の状態や気持ちなどを聴くこと(表4)
ストレス性障害の可能性が高いと考えたら、
ひとまず1~2週間の休養を勧めてみること。それでも変化を認めなければ、産業医への相談を勧める。
 産業保健スタッフによるケア
症例Aに準ずる。
 事業場外資源によるケア
症例Aに準ずる。

「職場のメンタルヘルス」 鹿児島県庁
2004年2月18日
メンタルヘルスかごしま中央クリニック 大迫政智

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