メンタルヘルス

このごろ思うこと「うつ病について」

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Ⅰ.ストレス



ストレスの種類:
  ①心理的ストレス(心配事など)
  ②身体的ストレス(身体の病気など)
  ③環境的ストレス(気温・騒音など)

表3:ストレス性障害の現れ方

ⅰ.身体的症状として
アレルギー性鼻炎 神経性視野狭窄 胃・十二指腸潰瘍
潰瘍性大腸炎 過敏性腸症候群 神経性嘔吐
本態性高血圧症 神経性狭心症 過換気症候群
気管支喘息 甲状腺機能亢進症 神経性食思不振症
インポテンツ 神経因性膀胱 不眠症
片頭痛 筋緊張性頭痛 書痙
痙性斜頚 関節リウマチ 腰痛症
頸肩腕症候群 原発性緑内障 メニエル症候群
円形脱毛症 多汗症  
ⅱ.精神的症状として
うつ病、種々の神経症(対人緊張、うつ状態、不安、心気など)、
不眠症
ⅲ.行動の症状として
イージーミス多発 事故多発
無断欠勤・遅刻 服装や身だしなみの乱れ
種々の依存症(アルコール、パチンコ等のギャンブル、買い物) 情緒不安定
(イライラ、八つ当たり、など)
仕事のムラ

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Ⅱ.うつ病
depression,melanchoria(E),Depression,Melancholie(D)



1.歴史および分類

(歴史)
ギリシャ時代には、ヒポクラテスによってうつ病の病像が記載されている。

:4種類の体液(黒胆汁、黄胆汁、血液、粘膜)の不調和が
 病気の原因と考えた。
 黒(melano) 胆汁(chol) →melancholie

:ヨーロッパでは中世まで記載がある。
 19世紀末から20世紀初頭にかけてのドイツで、
 Kraepelin,Eらは、躁うつ病、精神分裂病をその他の
 精神障害から分離した。
 (これらは、てんかんと合わせて三大精神病と呼ばれた)
(鑑別) 鑑別上気をつけなければならないのは、
精神分裂病初期の意欲に欠けた引きこもりに近い状態、
精神分裂病末期の欠陥状態における情緒表出が乏しく
外界に興味を示さない状態、そして痴呆の初期である。






2.なりやすい時期

a. 五月病(進学、卒業~就職)
b. マタニティー・ブルー(妊娠~出産)
c. 空の巣症候群(子育てが終わって)
d. 転勤うつ病
e. 引っ越しうつ病
f. 昇進うつ病 
g. 荷下ろしうつ病






3.経過

軽いもので2~3週、通常は3ヶ月前後で改善することが多い。
長い場合は2~3年以上持続し、難治性、あるいは遷延性うつ病と呼ばれる場合がある。
特に近年、抗うつ剤が汎用されるように なってから、これらの治療抵抗性うつ病が注目され、その治療技法が論議されることが多くなっている。

一般的には、
発症回数を重ねるほどに病期間が長くなり、
健康な期間が短くなる傾向がある
」とされる。

予後については基本的には良好とされたし、大半はそうである。
しかし、近年稀ではあるものの人格水準が病前より劣るものがあることが報告される。







4.症状

a.ごく初期
(自覚症状) 人に会うのが苦痛で、仕事をするのが億劫だ。眠りにくいし、気が沈む、アルコール量増加
(他覚症状) 人前に出ても喋らず元気なく、
動作や表情にもいつもの活気がない。
b.やや進行すると
(自覚症状) 朝目が覚めたとき、体が怠く起きにくい。起きても頭が重く、いつもならできる簡単な仕事が難しいことのように感じられてできない。気が焦り、イライラして落ち着かない。自分だけが取り残されていくような孤独を感じる。喜んだり、悲しんだりができなくなる。物忘れがひどくなり頭が悪くなったように感じ、このまま駄目になりそうで怖くなる。しばしば人に引け目を感じ、自分が悪いことをしたような、すまないような気がする。
(他覚症状) 近頃陰気になり、口数が減り笑わなくなり、なにもせず静かにしていることが多い。落ち着かぬ様子でイライラと室内を歩き回ることや、突然の自殺企図によって、初めてうつ状態に気がつくこともある。
c.さらに進むと
深刻な悲哀・絶望感、激しい不安・焦燥、抑うつ昏迷状態が出現。







これらの症状を整理すると

①抑うつ気分

 気が沈む、寂しい、
(これらは、「感動しなくなった」と表現されることが多い)
 空虚感、絶望、感情喪失感、

②抑制(制止

 億劫、根気がない、決断がつかない(意志・行動抑制
 考えが浮かばない、記憶低下(思考抑制
 進行するとボウッとして反応が鈍く、静止したようになる
 (抑うつ性昏迷)

③不安・焦燥

 心の不安としてでなく、頭痛、胸部圧迫、体の違和感が訴えられる
 こともある。同じ訴えが単調に繰り返されたり、
 時には強迫的になることもある。






この①~③がうつ状態の最も重要な症状。

④抑うつ妄想

 いつもならできることができなくなり、引け目を感じ始め(不全感)
 そうなった自分自身の責任を感じる(罪責感)

 *罪責妄想
  現在の自分の苦しみは、過去に自分が犯した過失の報いである。
  自分は取り返しのつかない間違いをおかしてしまった。

 *心気妄想
  自分の体はだめになった。
  医者には治せない不治の病になってしまった。

 *貧困妄想
  自分はこの病気になったので、入院費用が払えないし、
  孫の縁談もだめになる。家庭も破滅だ。

⑤離人症

 自分の考えや身体が自分のものであるというイキイキ感がない。
 身の回りの出来事が縁遠く感じ、
 まるで薄いベール一枚隔てているように感じる。

⑥自殺

 「このままスーッと消えてしまったらどんなに楽だろう」
  →「いっそのこと、死んでしまいたい」
 自殺念慮は、全経過にわたって認められる。
 自殺企図は、発症初期と回復期に多い。

⑦身体症状・自律神経症状

 全経過で認められる。
 特に「頭が痛い」、
   「耳鳴りがする」、
   「ものが見えにくい、ものが二重になって見える」
 などの症状 が前景にたち、精神症状が明らかでない場合があり、
 身体的治療を長期間受けて改善しないために精神科に紹介になる
 ケースも少なくない。(ときに抗ウツ薬の副作用と見極めにくい)

⑧睡眠障害

 ほとんど全経過にわたって認められる。
 <入眠障害熟眠障害早朝覚醒
 回復期には、今までとは逆に
 「いくら寝てもまだ眠い。一日に10時間以上寝てもまだ眠い」
 という時期が短期間現れることがある。

 この時期、周囲のものは改善傾向を指摘することが多いが、本人は
 まだ体が怠くて改善したとは感じていない場合が多い。

⑨日内変動

 認められることと、認められないこととある。
 認められない場合で、経過の途中から次第に日内変動が現れてくる事
 があるが、病状好転の前触れであることが多い、といわれる。

⑩幻覚

 一般に認めないことが多い。

⑪記憶、意識・見当識

 記憶低下を訴えることはあるが、これは注意力・集中力の障害による
 ところが大きい。特に老人では、一般的に器質的痴呆を疑わせる状態
 になり、(仮性痴呆)と呼ばれる。

⑫意識・見当職

 一般に障害されない。注意力障害を意識低下と見間違うことがある。






5.治療
①②③をケースによって組み合わせて施行する。

薬物療法・・・副作用、効果の限界など

1.抗うつ薬
第一世代(三環系) ・イミプラミン(トフラニール)、
・クロミプラミン(アナフラニール)、
・アミトリプチリン(トリプタノール)、
・ノルトリプチレン(ノリトレン)など
第二世代(四環系) ・アモキサピン(アモキサン)、
・マプロチリン(ルジオミール)、
・ミアンセリン(テトラミド)など
その他 ・トラゾドン(デジレル)
第三世代 ・SSRI パロキセチン(パキシル)、
・フルボキサミン(デプロメール)
・SNRI ミルナシプラン(トレドミン)
2.抗不安薬
ベンゾジアゼピン誘導体など ・ジアゼパム(ホリゾン)、
・アルプラゾラム(ソラナックス)、
・エチゾラム(デパス)など
その他 ・タンドスピロン(セディール)
3.睡眠薬:ほとんどがベンゾジアゼピン誘導体、一部バルビツール酸系
超短時間型 ・トリアゾラム(ハルシオン)、
・ゾピクロン(アモバン)、
・ゾルピデム(マイスリー)
短時間型 ・ブロチゾラム(レンドルミン)、
・リルマザホン(リスミー)、
・ロルメタゼパム(エバミール)など
中・長時間型 ・ニトラゼパム(ベンザリン)、
・フルニトラゼパム(サイレース)など
4.抗精神薬病
・クロールプロマジン(コントミン)、・レボメプロマジン(レボトミン)、
・ペルフェナジン(PZC)
・最近、非定型抗精神病薬も使用されることがある
5.その他
・炭酸リチウム(リーマス)、・カルバマゼピン(テグレトール)、
・ベルプロ酸(デパケン)など



精神療法・・・言葉は意図したことと異なって伝わることがある

 全般的注意として:本人および家族の両方に、
 *本人の性格、環境、その他のストレスなどが重なった場合に起こる
  現象であること、
 *「病気」であり「怠け」ではないことについて、わかりやすく伝わ
  る説明をする。


本人には、必ず治る病気なので、焦ったり、ヤケを起こしたりしないことを説明し、理解して貰う。家族には、叱咤激励して無茶をさせたりしないことを、説明する。

 初期における注意
 休養(特に質の良い睡眠と食事・栄養)が何より肝心であることを
 本人および家族に説明する。
 有効な薬があるので、きちんと服用してほしい事。
 (薬の効果が現れるまでの時間、薬の副作用、などに関しても)。


 その他のこと
 過去の過ちを過大に心配したり、現在の自己価値を過小に評価したり、
 将来を悲観したりする傾向が強い者がある。
 これに対しては、ある程度耳を傾けたあと、
 「暗闇では何もかも黒ずんで見えること」等、取り越し苦労の可能性
 を分かりやすく説明する。


つまり、ウツ状態のフィルターを通してしか考えたり感じたりすることのできないのが現在の状態であることを説明する。

上記とともに、大まかな治療スケジュールの説明。
(本人、そして家族が慌てないためには道標に関する簡単な知識は必要)

以上の説明の際には、症状としての「抑制(制止)」に起因して、納得に時間がかかる傾向がある。
慌てずに時間的余裕を持って説明したいところだが・・・。




環境療法・・・うつ状態に対する誤った認識は決して少なくない

環境の急激な変化(引越、旅行、結婚、離婚、就職、退職、配置換え)は好ましくない(転地療法や気晴らし旅行は逆効果のことが多い)。

結果を焦らず見守ってあげることのできることのできる環境が大切。
(見る∽見守る、見張る、etc)

自殺の危険性が強いとき、身体的消耗が激しいとき、薬物の効果がなかなか上がらないときなどは、入院を考慮する必要もある。
(適切な入院施設!?の選択、本人および家族への説明または説得)

自宅療養あるいは入院治療で改善しても、最終的に職場復帰する際に、緊張度や種々の刺激の度合い、あるいは周囲の無理解(完全に治ってから、薬を飲まなくて良いようになってから etc)などの差が大きく、ハードルは高い。

<ここでどういう梯子を架けるのかが問題だ>


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Ⅲ<4つのケア>



 ①セルフケア
 労働者自身がストレスや心の健康について理解し、
 自らのストレスを予防・軽減し、対処すること
a.ストレスへの気づき 心の健康やストレスについて労働者自身が適切に認識できること
b.ストレスへの対処 労働者自身がストレスの予防・軽減方法や対処する能力を身につけること
c.ストレスへの気づきや対処を進めるためには、
心の健康についての相談相手が必要である。
(身近な人、管理監督者、事業場内産業保健スタッフなど)
d.セルフケアを推進
するための環境整備
労働者のセルフケア支援対策が十分に為されている事業場は現状では少ない
 ②ラインによるケア

(ライン:日常的に労働者と接する現場の管理監督者)

 うつ病は早期発見ができ、かつ早期に対応すれば比較的治りやすい
 病気である。一方、発生頻度は高く、自殺の危険性もある。
 労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境等
 の改善や労働者に対する相談対応を行う


 a.職場環境等の改善
 改善の対象:職場環境(作業環境、作業方法、休憩施設など)、
 労働時間、仕事の量や質、職場の人間関係、人事労務体制、など
 管理監督者は、声掛けを惜しまず、良き聞き役となること。
 (積極的傾聴)

 職場環境等の改善:他部署からの助言や協力を受け入れること
 (特に事業場内産業保健スタッフおよび事業場外資源のスタッフ)

 個々の労働者への配慮:労働者の個々の能力、適性、および職務内容
 に合わせた配慮が必要


 b.労働者に対する相談対応
 個別の配慮が必要と考えられる労働者に対しては、
 日常的に対応する必要性


 c.事業者
 これらの管理監督者の役割や活動を十分理解し支援することが必要

 ③事業場内産業保健スタッフ等によるケア

 事業場内産業保健スタッフ等
 産業医、事業場内保健士、臨床心理士、産業カウンセラー、
 人事労務管理スタッフ等

 事業場内の健康管理担当者
 事業場内の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、労働者および
 管理監督者を支援する

 その業務 a.職場環境の改善
b.労働者への相談対応
b.労働者への相談対応
・就労中の心の健康問題を持つ労働者に対して →管理監督者と協力して職場適応を支援する

・専門的治療が必要と考えられる労働者
→その意志に配慮しつつ、適切な職場外資源
 を紹介する

・休業中の労働者の職場復帰に対して
→管理監督者や事業場外資源と協力しつつ
 指導・支援を行う

c.ネットワークの
 形成と維持

・事業場と事業場外資源とのネットワーク形成に関する中心的役割

・事業者の強力な支援と理解が必要

 ④事業場外資源によるケア

 事業場外資源
 地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センター、
 精神科・心療内科等の医療機関など事業場外の機関および専門家を
 活用し、その支援を受ける

 a.大規模・中規模事業場
 事業場内産業保健スタッフがその役割を担う
 b.中小規模事業場
 人材確保が困難な場合、地域産業保健センター、
 都道府県産業保健推進センター、などの支援を受けるのが有効
 c.50人未満の小規模事業場
 人材確保が困難な場合が多いため、事業者の理解が果たす役割が重要
 となる。従って、事業者への啓発および情報提供が大切

このごろ思うこと「うつ病について」
2009年5月15日

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