メンタルヘルス

産業保健の話題 - 鹿児島県医師会報 令和5年2月号

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第258回:最近思うこと

      鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健相談員 大迫 政智

コロナ感染症についての世間の関心は未だ高い状態が続いており、日々報道されるところである。

症状の軽症化の有無、その一方で感染者数や死者数は減少のあと再び増加傾向にあること、新しい変異型の確認、治療薬の開発、などについて。

心療内科・精神科の日々の外来診療では、コロナ感染症そのものやワクチン接種後の局所痛に関する相談は減ったが、感染後やワクチン接種の後遺症としての倦怠感や億劫感について相談されることはよくある。

だがこの症状が、うつ病の経過中の現象として相談されることが多いため、主治医としては判断にいささか困ることがあるのだ。

というのは、患者さんから聞く情報として最近多いのが、(多分これもコロナ感染症問題が長期化している影響と考えられるのだが)職場の人員減、およびそれに伴う個々の従業員の業務量増加、従って休日勤務が増えたり超過勤務が増えたり、結果として「最近疲れがとれにくいです」という相談だからである。

この相談のような業務過重に伴う「疲弊」の症状としての倦怠感・億劫感なのか、それとも、うつ病の経過中に状態悪化の「徴候」として生じたそれなのか、決めかねる、あるいは多分両方混在しているのだろう、と考えさせるケースが増えているのである。

コロナ感染症がWHOに正式に報告されたのが2019年12月31日、もう3年という長い月日が過ぎているのだから、「疲弊」が社会現象として世に蔓延しているということもできそうだ。

そういえば最近気になることがもうひとつ。障害者年金新規申請者の増加である。

現在、小生の診察室の脇机には、継続申請者の年金申請書が2人分。新規申請者のそれが3人分。カルテに挟み込まれて積んである。いずれも、この2週間に持ち込まれたものである。年金診断書をひとつ作成すると、またひとつ(あるいはそれ以上)年金診断書(ことに新規の診断書)が脇机に積まれていく、そんな(いたちごっこのような)日々が続いている。これもまた、コロナ感染症問題長期化の結果が巡り巡ってきたところか、と愚考するところである。

ところで、一人勤務体制のクリニック医師にとって、年金診断書のような複雑な書類を作成する時間は、診療開始前の早朝か、診療終了後の夜間か、それとも休日出勤して作成するか、しかない。

患者さんの超過勤務にかかわる精神保健も気がかりだが、一人勤務体制クリニック医師の皆様の身体保健および精神保健も気がかりなところである。


第258回:最近思うこと
2023年1月

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