メンタルヘルス

診察室で思うこと

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診察室で思うこと

      メンタルヘルスかごしま中央クリニック 大迫 政智

 クリニックを訪れる患者さんのおそらく7~8割はうつ病圏の方です。

 約40年前大学病院に籍を置いていた頃、うつ病の原因は、双極性うつ病は循環器質に求められ、単極性うつ病の原因は執着気質(下田)あるいはメランコリー型(クレッチマー)に求められるという考え方が多かったと思います。セロトニンやドーパミンなど脳内アミンの研究は教室でもちょうど始まったばかりだったでしょうか。

 翻って現在、うつ状態でクリニックを訪れる患者さんのうち、執着気質は減少したか、あるいはその程度が弱くなってきたかのように感じます。

 代わって不眠、倦怠感、意欲低下等を訴えるとともに初診時から「このところ多忙だったので疲れて、休みたいので診断書を書いてください」という患者さんが増えている気がします。このような方は自覚症状としてのうつ状態ではありますが、本来の意味のうつ状態とは些か異なりそうです。

 何が異なるかの考察はまたの機会に譲るとして、減少したとはいえ執着気質の方はやはり認められます。そのかなりの部分が適応障害のうつ状態に分類されている印象も受けます。このような方は、休職診断書を提出しても仕事のことばかり考えていたり、出勤できない自分は駄目な人間だと思い込んでしまったり、求職してかえってうつ状態が悪化することさえ稀ではありません。

 このような症状に対する抗うつ剤の効果はあまり芳しくありません。適切な精神的支えが必要です。

1)できることはする。できないことはしない。
 執着気質とは、几帳面、熱中、凝り性、強い正義感、律儀等を特徴とする気質です。従って上述のように休職診断書を提出してもできない自分を責めようとします。このような方には非常にシンプルに「うつとは、心のエネルギーの低下した状態です。この状態で、エネルギー満タンのときにできることをできるわけありませんよね」と説明します。患者さんはそれでも「でもそうなっちゃうんです」と食い下がることも多いです。バッテリーが切れかかっている携帯をそのまま使い続けますか」と問い返して、バッテリー充電期間を設けることを承諾してもらいやすくなります。あとは徐々に調子悪いところばかりを見つけようとする癖に関して、今できることを続けていけば心のエネルギーは増えていく、そしてできることも増えていく、と提示していくうちに患者さんも改善を認めやすくなっていくようです。それが小生のクリニックの工夫のひとつです。二つ目はまた後日。


診察室で思うこと
2025年8月

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